
開発の経緯
エフメノ®カプセル100mgは、更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制を目的とした天然型黄体ホルモン製剤です。
ホルモン補充療法(HRT:Hormone replacement therapy)は、エストロゲン欠乏に伴う更年期障害等の諸症状及び疾患の予防あるいは治療を目的として開発された療法で、欧米では1970年代、本邦では1990年代から行われ始め、以後その効果を実証した臨床データの蓄積により有用性は高まっていきました。一方で、2002年に公表された米国の大規模臨床試験(WHI:Women’s Health Initiative)において、本療法実施による乳癌や子宮内膜癌、血栓症等のリスクを上昇させる可能性が明らかにされて以降、本療法に関するより一層の安全性検討が進められました1-4)。
HRTのリスクに関しては、当初普及したエストロゲン製剤単独投与において、エストロゲン製剤の子宮内膜増殖作用により子宮内膜癌を発症する危険性の上昇が指摘されました。これに対しては、エストロゲン製剤に黄体ホルモン製剤を併用することにより子宮内膜癌の発症が抑制されるとの報告を踏まえ、以降は子宮を有する患者にHRTを行う際には黄体ホルモン製剤を併用することが一般的となりました。
本邦の「ホルモン補充療法ガイドライン」5)(日本産科婦人科学会・日本女性医学学会編)でも示されているとおり、HRTにおける黄体ホルモン製剤投与の目的は、全身的なエストロゲン製剤投与による子宮内膜癌、子宮内膜過形成のリスクを増加させないことにありますが、HRTにおいて子宮内膜増殖抑制に関する適応を有した製剤はありませんでした。また、HRTにおいて合成黄体ホルモン製剤を併用した際の副作用発現リスクが、本剤を用いることにより低減しうる可能性が示唆され6-9)、本剤は以前から本邦において開発の要望がありました。
「医療上の必要性の高い未承認の医薬品又は適応の開発の要望に関する意見募集について(平成21年6月18日付)」において、日本産科婦人科学会及び日本更年期医学会(現:日本女性医学学会)から、本剤開発の要望書が提出されました。その後、「第3回 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議(平成22年4月27日開催)」において、本剤は医療上の必要性が高いと判定され、本邦において開発企業の募集が行われました。富士製薬工業株式会社は、本邦で開発の強い要望があること、及び既に本剤が海外で30年以上にわたり使用されていることを踏まえて、本剤の開発に着手しました。
その後、国内第Ⅲ相臨床試験において、子宮非摘出の更年期障害女性におけるエストラジオールと本剤の併用について有効性及び安全性が確認されたことから、「更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制」を効能又は効果として2021年9月に、製造販売承認を取得しました。
1)Jacques E Rossouw, et al.: JAMA. 2002; 288(3): 321-333[PMID:12117397]
2)North American Menopause Society: Menopause. 2007; 14(2): 168-182[PMID:17259911]
3)F Naftolin, et al.: Climacteric. 2004; 7(1): 8-11[PMID:15259278]
4)日本更年期医学会: 日更年医誌. 2004; 12(1): 120-123
5)日本産科婦人科学会・日本女性医学学会編: ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版. 日本産科婦人科学会. 2017
6)Fournier A, et al.: Int J Cancer. 2005; 114(3): 448-454[PMID:15551359]
7)Fournier A, et al.: Breast Cancer Res Treat. 2008; 107(1): 103-111[PMID:17333341]
8)The Writing Group for the PEPI Trial: JAMA. 1995; 273(3): 199-208[PMID:7807658]
9)Moorjani S, et al.: J Clin Endocrinol Metab. 1991; 73(2): 373-379[PMID:1649840]